私がクリーニングをする理由。
通常、歯科医院での歯のクリーニングは、歯科衛生士が担当することがほとんどだと思います。
しかし、私の医院では、私自身も患者さんの歯のクリーニングを行っています。
歯科衛生士がいない歯科医院であれば、歯科医がクリーニングを行うしかありません。しかし、私の医院には歯科衛生士がいます。
それでも私がクリーニングを行うのには理由があります。
まずは、私が自分でクリーニングをするようになった経緯からお話しします。
これは、先代から医院を引き継いだ頃の話です。
当時はまだ自分の担当患者さんがおらず、長年先代のもとに通われていた患者さんを、いきなり私が治療するわけにもいきませんでした。そこで、歯科衛生士が担当していた患者さんを少し分けてもらい、私が歯のクリーニングを担当するようになりました。
それまで私は、学生時代の実習で経験した程度で、歯のクリーニングをほとんど行ったことがありませんでした。勤務医時代も、クリーニングを担当する機会はほぼありませんでした。
歯科医は治療を行い、クリーニングは歯科衛生士が担当するもの。そんな分業体制が当たり前だと思っていたからです。
実際、勤務医を雇う理由の多くは、院長だけでは対応しきれない患者さんの治療を任せるためです。クリーニングを担当してもらうよりも、どんどん治療を進めてほしいというのが一般的でしょう。
話を戻します。
自院でクリーニングを始めたばかりの頃は、「治療をどんどんしたいのに、なぜ歯科衛生士の仕事をしなければならないのだろう……」という不満がありました。
ところが、実際にやってみると、クリーニングは思いのほか難しいものでした。
歯石がうまく取れない。やたらと時間がかかる。ブラッシング指導ができない。適切な歯間ブラシのサイズが分からない。患者さんが苦しそうにしている。痛がらせてしまう。
やってみて初めて、自分にはできないことが意外と多いと気づいたのです。
これでは、将来歯科衛生士を雇ったとしても、適切に指導することができません。
それではいけないと思い、私は真剣にクリーニングに取り組むようになりました。
その後は、歯科衛生士向けのセミナーにも参加し、歯石除去やクリーニングについて学びました。
そんなことを10年以上続けているうちに、自然とクリーニングをこなせるようになり、後から入職した歯科衛生士にもさまざまなことを教えられるレベルになりました。
クリーニングをしていると、本当に多くの発見があります。
クリーニングをしながら、自分が過去に治療した歯の状態を確認したり、噛み合わせの癖や歯磨きの仕方を観察したりできます。治療だけをしていた頃には気づけなかったことが、たくさん見えてくるのです。
「この歯はだいぶ弱ってきたな。そろそろ新たな治療の提案をしたほうが良いかな。」
「前は磨けていなかったのに、随分磨けるようになってるなぁ。」
「この入れ歯も随分、長く使って頂いているな。そういえば、この患者さんは最初入れ歯の不具合が気になって来院されたんだった。」
「この患者さん、だいぶ歯のすり減りが強いなぁ。前はこんなに擦り減ってなかったのに。次に治療する時は擦り減りの少ない材質を提案しよう。」
「前は磨けていたのに、かなり磨き残しがあるなぁ。何か生活で変化があったか、後で聞いてみよう。」
などなど、色んなことが頭に浮かびながらクリーニングをしています。
また、当院では、インプラント手術の1週間前と当日の計2回、歯のクリーニングを行っていますが、このクリーニングは基本的に私が担当しています。
クリーニングをする際には、まず患者さんの口の開き具合を確認します。口が十分に開かなければ、手術の難易度が上がるためです。開きが小さい場合には、手術時に使用する器具を追加で準備する必要があります。
また、手術部位周辺の歯や歯ぐきの状態を詳しく観察しながら、どの角度から手術を行うかなど、頭の中でシミュレーションを繰り返しています。
このような準備を事前に行うことで、実際の手術をよりスムーズに進めることができるのです。
私にとって歯のクリーニングは、単に歯石を取るだけの作業ではありません。
患者さんのお口の状態を深く理解し、より良い治療・予防につなげるための大切な時間でもあると考えています。
以上「私がクリーニングをする理由。 」でした。
皆さまのお口の健康の参考になれば幸いです。
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