カルテ整理をしていて感じたこと

院長の笹山です。

年末年始と年明け最初の連休を使ってカルテ整理をおこないました。

カルテの保存期間は法律で5年と決まっており、保存期間を過ぎたカルテは整理していかないと溜まる一方で、医院に保管するスペースが無くなってしまいます。

カルテを整理するなかで、保存期間をとうに過ぎている昔のカルテが入った保管ケースをいくつか発見しました。

飛び飛びですが、平成の初期だったり、古いものでは昭和50年代のものもありました。

カルテというものは治療の記録だけでなく、患者さんの保険証の情報も記載されています。

当院には先代の頃から通われている高齢の患者さんが多くいらっしゃるのですが、その方々が過去にどんなお仕事をしていらしたのかが、カルテの保険証欄を見るとある程度分かります。

「あの方、学校の先生だったんだ。」とか「あの企業にお勤めだったんだ。」「看護師さんだったんだ。」などです。

そんな感じがするなぁと思う方もいらっしゃれば、失礼ながら意外だなと感じる方もいらっしゃいました^^

皆さん仕事を何十年も続けられて、今のお姿があります。おじいちゃん、おばあちゃんの患者さんとしてだけでなく、人生の先輩としての尊敬の気持ちを忘れてはいけないとあらためて感じました。

こんな経験を思い出しました。

私がまだ勤務医だった時、20代の終わりくらいの話です。

勤務先で高齢者の男性患者さんに叱られたことがあります。

「説明が足りない。年寄りだと思って説明をはしょるんじゃない!」

自分では普通に説明したつもりだったのですが、どこかで「おじいちゃんの患者さんだから…細部まで詳しく説明しなくてもいいんじゃないか。」と思っていたのかもしれません。

後で院長先生に「あの患者さんは、昔会社経営をされていて、それなりの立場にあった人だから、そういう接し方は良くない。」と叱られました。

そんなことで、高齢者の方をおじいちゃん、おばあちゃんではなく、人生の先輩として接することの大切さを知りました。

もちろん、おじいちゃんやおばあちゃんとして接したほうが、患者さん自身が楽な場合もありますが、そうでない場合もあるということです。

カルテ整理の話に戻ります。

カルテは大きなみかん箱12箱分くらいを休診日を4日間利用して整理しました。

重さにして何キロでしょう。多分全部合わせて、60キロぐらいあったと思います。整理が終わって、なんとなく医院が軽くなったような気がします。

普段使わない筋肉を使ったので足腰が筋肉痛で2,3日痛みましたが、カルテ整理をして、心も整理された気がします。

患者さんにご指摘いただき改善したこと

院長の笹山です。

今年も細々とブログを書いていきます。

今回は患者さんにご指摘いただき改善したことの話です。

いきなり話は変わりますが、私は去年から、ほぼ全ての治療においてメガネタイプのルーペ(拡大鏡)を装着して治療しています。

こんな感じです↓

ルーペを装着すると、歯やお口が拡大して見えますので、正確な診断や精度の高い治療が可能となります。

たとえば、ルーペを使うと、歯がよく見えるので虫歯が発見しやすくなり、虫歯を治療する時も健康な歯を削らずに虫歯だけを綺麗に取りきることが出来ます。

小さな穴の虫歯を削ると、神経ギリギリまで到達する虫歯だったケース↓

ルーペは今までも要所要所で使っていたのですが、去年からは例外を除いてほぼ全ての治療に使っています。

その理由は…

実は私が担当した患者さんから、歯石を取り残していたことをご指摘いただいたことがありました。

確認させていただいたところ、確かに取り残しがありました。

私は元々目が良いほうで、普段は裸眼で過ごせるくらいですので、歯石取りに関してはルーペをほとんど使っていませんでした。

自分の視力を過信していたのだと思います。

やはりこういうことではいけないと思い、歯石取りにもルーペを使うようにしました。

それからは、一部の治療だけでなく、被せ物の調整や、歯型採りなど、今まで使用しなかった治療においても、使用するようになり、結局ほぼ全ての治療に使うようになりました。

使用頻度がどんどん増えた理由としては、やはりどのような治療においてもルーペの方が良く見えると実感したからです。

3年くらい前まではルーペを長時間使うと、頭がクラクラしたり、目が痛くなったりすることがあったのですが、今はその時と同じルーペを使っても、そんなことはありません。

やはり「もうルーペを使わないとダメだよ。」ということなんだと思います。

実は、年配の歯医者さんの引退理由で意外と多いのが

「目が良く見えなくなった。」

なんです。

人間ですので、視力も年と共に衰えていきます。日常生活での視力に問題はないのですが、歯医者の仕事は、数ミリ単位、細かくはミクロン単位の仕事です。

元々、光が届きにくく、暗く狭いお口の中で「良く見えない。」というのは歯科医にとって致命的なことです。

「見えなくなる」という、キャリアを積んだ歯科医なら誰もが直面する問題をルーペで補うことが可能な時代になりました。

更に高倍率のルーペを使用すれば、”補う”以上の効果があります。

高倍率ルーペは肉眼では見えないものを見ることが出来ます。

そこで新たに高倍率のルーペも導入しました。

カールツァイスという一眼レフやビデオカメラ、双眼鏡に使用されるレンズメーカーのルーペで倍率は8倍です。

もはやルーペといいますか、メガネに双眼鏡をつけたような外観になっています。

レンズ部にかなり重みがありますので、ただメガネをかけるように装着しただけですと、鼻の下にずり落ちるので、後ろの紐でしっかり後頭部に固定し、耳の後ろにゴム製の引っ掛けをつけなければなりません。

こちらの8倍モデルは今は製造中止になっており、特注でも5倍までしか販売していません。

その理由は、倍率の高いルーペは扱いが難しく需要が無いからだそうです。

なぜ高倍率のルーペだと扱いが難しくなるかといいますと、倍率が上がると、よく見えるようになる反面、ピントの合う範囲が狭くなります。

この8倍ルーペではピントの合う範囲は1㎝ぐらいなので、術者の顔が少し動くとピントが合わなくなり、視野がぼやけます。そんな感じですので、使いこなすには結構な訓練が必要そうです。

ですので、こちらのルーペは、今のところ、従来のルーペでは確認しづらい部分を確認するために使用しています。

たとえば、歯のヒビの有無や、細かい虫歯の取り残しの有無、歯の根の治療の際の根管の確認など肉眼では確認しづらい部分です。

この8倍のルーペのレンズを通して歯を見ると、どんな感じに見えるかといいますと、1本の歯は岩のようにそびえ立って見え、肉眼では見えない歯の凹凸や細かい溝など表面性状が見え、歯ぐきをみると、細かい毛細血管まではっきり見えます。

とにかく良く見えます。

少しずつこちらの8倍ルーペの使用頻度も増やして、より良い診断や治療に繋げられるようにしたいと思います。

以上「患者さんにご指摘いただき改善したこと」でした。

今回もご覧いただきありがとうございました。

だんだん良くなる患者さん

院長の笹山です。

当院を先代から引き継いで来年で10年を迎えます。

10年近く継続して患者さん拝見させていただいた中で、最近よく思うことについて書きます。

それは、以前は歯を上手く磨けていなかったけれど、だんだん上手く磨けるようになって、虫歯がほとんど出来なくなり、歯周病の進行も停止するか、穏やかな進行に変わった患者さんが増えてきたという事です。

ある患者さんは、歯ぐきの腫れが酷く、歯ブラシや歯間ブラシをしただけで口の中が血だらけになるくらいでしたが、今は歯磨きも上手になり、全く血が出なくなりました。

ある患者さんは、定期健診は欠かさずいらっしゃるのですが、検診のたびに虫歯見つかって治療していました。その後、歯間ブラシを毎日するようになり、虫歯がほとんど出来なくなりました。

また、ある患者さんは、元々歯周病があり、少しずつ歯が抜けていき、入れ歯になってしまいましたが、今では治療ではない日でも、歯間ブラシやうがい薬だけを買いに来られ、歯磨きも熱心にされるようになりました。

この患者さん方に対して、当初は何度も予防の大切さを説明したり、歯磨きや歯間ブラシの使い方を指導してきましたが、その効果はあまりなく、口の中がどんどん悪くなっていったのです。

この磨けなかった患者さん方が何故だんだん良くなっていったのかと考えたのですが、私は3つの要因があると思います。

①気づき 

②継続 

③時代

です。

①気づき

まずは「気づき」です。私もそうですが、自分が困ってもいないのに、人から何かをするように押し付けられても継続するのは難しいと思います。

歯を磨かなくても、普通に食事や会話が出来れば困りません。

本当に歯がグラグラして噛めなくなったり、歯が抜けてしまったり、虫歯で痛い思いをしたり、口臭を指摘されて気になったり、そういう色々なことが積み重なって「これじゃいけないかも…。」と気づきがあって、初めて自ら自分の歯の健康について考えるのだと思います。

ですので、この患者さん方にも、この10年の間に「ちゃんと磨こう。」と自ら思えるきっかけが何かあったのかもしれません。

ちなみに私自身の恥ずかしい話なのですが、私は昔から就寝時にマウスピースを必ずしなくてはいけないほど、噛み締めや歯ぎしりが酷いのですが、自分で作ったマウスピースを持ってはいたものの、ほとんど使っていませんでした。

理由はシンプルに面倒だったからです。

そしてマウスピースをしなくても、それまで困ることが無かったからです。

しかし、ある時に歯ぎしりによって歯にヒビが入り、そのヒビから虫歯菌が入って、虫歯になってしまい、3本の歯を治療しました。

医者ならぬ、歯医者の不養生です。

歯医者なのに虫歯が出来てしまったことが、悔しくて、ショックで、それからはマウスピースをずっと継続しています。

②継続

次に「継続」です。先ほど書いた3人の患者さんに共通することが1つあります。それは定期健診を継続して受けていらっしゃったことです。歯が磨けていなくても、歯が悪くても、欠かさずに定期健診で歯医者さんに来られることで、歯の健康に意識が向く機会が何度もあったということです。

人と人が親しくなる方法の一つに、会う回数や話す回数が増えれば増えるほど親しくなるというのがあるそうですが、あまり磨けなくても、とりあえず定期健診で歯医者さんに行っていれば、歯の健康について考えるきっかけはあります。磨き方をチェックされたり、クリーニングでサッパリすることで、予防に対する意識が高まることもあると思います。

③時代

最後は「時代」です。少し大袈裟な話になりますが、この10年で患者さんの歯の健康に対する意識が高くなっていると感じます。

テレビやネット、新聞で歯の健康が全身の健康に深く関係すること取り上げることが増えました。誰もがスマホを持つ時代になりましたので、お口のことで気になることがあれば、サッと検索も出来ます。

患者さんからも「歯周病と糖尿病って関係あるんですね。」「歯磨きのあとはあまりゆすがない方がいいって、テレビでやってました。」など、ひと昔前では患者さんから聞かれなかったようなことをおっしゃる患者さんが増えました。

以上の3つが私の考える要因です。

だんだんと良くなる患者さん方について思うのは、何かを改善するには時間がある程度必要だということです。

虫歯や歯周病は生活習慣病です。

いくら治療をしても、普段の歯磨きや食生活が良くないと、また再発して悪くなります。

毎日生活していると色々大変なことがあります。

ストレスでつい甘い物ばかり食べてしまったり、子育てや仕事で疲れて歯磨きまで気が回らないなど、仕方ない時期は誰にでもあります。

ですので、指導しても磨けない患者さんには寄り添いながらメンテナンスしていき、患者さんが気づくきっかけを待つことも大切だということを患者さんから教わりました。

私の尊敬する歯科医の先生の言葉に「最良の先生は患者さん」という言葉がありますが、患者さんから教わることは本当に多いです。

これからも患者さん1人1人に向かい合い、寄り添った診療を出来るように頑張ってまいります。

以上「だんだん良くなる患者さん」でした。

今回もご覧いただきありがとうございました。

舌が痛い。ヒリヒリする。

院長の笹山です。

当院には「舌が痛い。ヒリヒリする。」と来院される患者さんが結構いらっしゃいます。

考えられるのは…

1)口内炎

2)舌痛症

3)ドライマウス

4)カンジダ症

5)被せ物や入れ歯の不具合

6)良性腫瘍や癌など

などです。

この中で原因として多いのは、ドライマウス(口の乾燥)です。

口の乾燥には原因が色々あります。

1)鼻呼吸ではなく、口呼吸している場合。

2)薬の副作用で唾液の分泌が減っている場合。

3)加齢現象で唾液の分泌は減った場合。

4)アルコール成分を含むうがい薬を頻繁に使う場合。

5)ストレスや更年期障害がある場合。

ではなぜ口の乾燥が、舌の痛みやヒリヒリの原因になる可能性があるのでしょうか?

口の中には凸凹した歯があるのに、舌が触れても痛くないのは、唾液で濡れているからです。

話したり、食べたりするときに舌があちこちに動いても、唾液が潤滑油となって、歯に触れても痛くないのです。

この唾液が減ると、舌の動きにスムーズさが無くなります。

歯は年齢と共にすり減っていき、歯の表面の凸凹が減り、平らな面になっていき、面になった部分の端っこは角になります。

擦り減ってギザギザした前歯↓

このすり減ってギザギザした歯は、普段唾液で濡れていると気にならないのですが、唾液が少ないと舌が擦れたりして、痛くなることがあります。

詰め物や被せ物、入れ歯の段差も、唾液が少なくなると、舌に擦れる可能性があります。

当院では、まずお口の中をチェックして、そのような段差や角が無いか確認します。そして乾燥の原因が他にないかを診察をします。

そして、原因が特に見られない場合は舌痛症を疑います。

舌の痛みやヒリヒリが気になる方の中には「もしかして悪い病気?」などと悩まれている方が多いです。そんな時はご相談いただければと思います。

以上「舌が痛い。ヒリヒリする。」です。

 

親知らずの下に、もう一本親知らず?

院長の笹山です。

先日、虫歯が酷くなった親知らずを抜歯する処置をおこないました。

下のレントゲン画像の向かって左端が虫歯の親知らずです。どこが虫歯か分かりますでしょうか?

 

図解します↓ 赤く縁取っているのが親知らず、その中の斜線部分が虫歯です。かなり大きい虫歯です。これくらいだと今まで痛みが無かったのが不思議なくらいです。(青い部分については後で説明します。)

虫歯で崩壊寸前の親知らずを抜くのは、ちょっと難しいです。

まず虫歯で歯がボロボロに溶けているので、抜きにくくなっています。例えるなら、腐って朽ちてしまった木の根っこを引っこ抜くようなイメージです。掴むとボロボロと壊れていくので、難易度が上がります。

何とか抜歯し終えて、抜き残した根っこがないか歯を抜いた穴をミラーで確認したところ、親知らずを抜き終わったはずの穴に、歯の根っこではない何かがはっきりと見えました。

その何かとは、親知らずを抜いた穴から見える過剰歯でした↓

*過剰歯とは? 

人間の歯は通常親知らずを除くと上下合わせて28本あります。その28本以外に歯が余分に出来てしまったものを過剰歯といい、病気等ではありません。通常の歯のように生えてくる場合もありますし、今回のように骨の中に埋まったままの場合もあります。歯の大きさは通常の歯より小さいサイズのものがほとんどです。

図解します↓青囲みが親知らずを抜いた後の穴、緑囲みが骨に埋まった過剰歯の一部が見えている状態、矢印は手前の奥歯の一部です。

ちなみに先ほどの2枚目のレントゲン写真の青囲みの部分が過剰歯です。

実はレントゲン写真を見た段階では、親知らずの大きな虫歯に気を取られて、過剰歯の存在に気づいていませんでした。何となく、親知らずの根っこの周囲のレントゲン像に違和感を感じてはいたのですが…。

この過剰歯は深い位置にありますので、このまま抜かなくても、傷口が塞がれば、埋もれて見えなくなります。埋まったままの歯であれば、虫歯になったりしませんし、問題はほとんど起きません。

ですが、見つけてしまったものをそのままにするのは、何となく違和感があるので、同時に抜いておきました。

ただし、この過剰歯は骨に埋もれていたのと、解剖学的に副鼻腔(上顎洞)と近接していたので、かなり慎重に抜歯をおこないました。

抜き終わった歯です↓ 左が過剰歯、右側が親知らず(虫歯でボロボロだったので、ほとんど根っこだけの状態です。)

患者さん、お疲れ様でした!

安全に抜歯をするために少し時間がかかってしまいましたが、無事両方抜けて良かったです。

以上「親知らずの下に、もう一本親知らず?」でした。