「親の入れ歯が合わなくて、別の歯医者さんで高価な入れ歯を作ったのですが、痛くて噛めないって言ってるんです。」
「先生、何とか診てもらえませんか?」
当院の患者さんからご相談頂きました。
「一度拝見させてください。」とお返事して、
数週間後にお二人で来院されました。
前の歯医者さんで作った入れ歯を見ると、出来はとても良くて、何かが間違っているというものではありませんでした。
しかし、その患者さんの歯ぐきや顎の骨はやせ細っていて、その高価で良い入れ歯でも痛みが出てしまう状況でした。
その入れ歯を調整して、使えるようになれば、余計なコストもかからないので、まずは今の入れ歯を数回に渡って調整しました。
しかし、残念ながら痛みが完全になくなることはありませんでした。
当院は通常の入れ歯を何度調整しても、痛くて噛めない方には、シリコン入れ歯をご提案しています。
ここでひとつ大事なことなんですが、シリコン入れ歯を作れば、必ず痛くないというわけではありません。
シリコン入れ歯は、作り方がとても大事です。
単に「痛みが取れないなら、シリコンで作ればいい。」と安易に手を付けると、患者さんの信頼を損ねます。
私もセミナーを受けたり、歯科技工士さんに教えてもらいながら、色々と試行錯誤を繰り返して、それなりの結果が伴うようになりました。
ですのでシリコン入れ歯を作る時は、毎回「今回はどうだろう、いけるかな。」というプレッシャーを感じています。
そして今回は、患者さんご本人ではなく、親御さんの治療、しかも既に高額な入れ歯を作って大きな出費されている。
「もしこれで上手くいかなかったら…。」と、普段より大きなプレッシャーを感じました。
しかし「期待してご相談して下さった思いに応えたい。」「今度こそ、痛くなく噛めるようになって欲しい。」という思いから、難しいケースでしたが、引き受けることにしました。
仮の入れ歯作りからスタートし、シリコン入れ歯の完成まで、何度か通って頂きました。
シリコン入れ歯の完成後は、少し痛みが出ましたが、数回の調整で良くなり、痛みが全くなく噛めるようになり、ご本人様から感謝の言葉を頂き、ホッと安堵しました。
ありがたいことに日々の診療でも感謝の言葉を頂いていますが、このように困っていらっしゃる患者さんを何とかして差し上げられた時に、頂く感謝のお言葉は、とても励みになります。
自分に自信と力を与えてくれます。
今の若い世代に方々は、歯が健康で虫歯も減りました。
しかし、私の親世代(昭和20年代生まれ)の方は、まだまだ歯で苦労されている方が多いのが現状です。
20年くらい前に予防歯科の大家といわれる有名な先生のセミナーを受けたことがあります。
そのセミナーで講師の先生が
「過去の治療が多く、悪い箇所が多い人に予防歯科をやっても、もう遅い。」
「そうじゃなくて、まだ歯が悪くない人を、悪くしない予防歯科をしましょう。」
とおっしゃっいました。
その先生は、今まで散々治す治療をしたけれど、何年も経つと結局ダメになることの繰り返しが嫌になって、予防歯科を始めたそうです。
おっしゃっていることの意味は分かるのですが、「歯が悪い人の予防するのは、もう遅い。」と切り捨てるような言い方をされた時に、それまで熱心に講義を聞いていた気持ちが、サーっと覚めていった記憶があります。
「歯が悪くて、苦労をしたけれど、少しでも自分の歯を大切にしたい。」
「これ以上悪くなりたくない。」
と、真剣に思っている方がいらっしゃいます。
そういう方に頼っていただける歯医者でありたいと、いつも思っています。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院