銀歯の下の虫歯の話

以前こんな患者さんが来院されました。

来月から数年間海外に行くので、渡航先で歯で困らないように、いつもの歯医者で検診を受けたところ・・

「銀歯の下が〇本、虫歯になっています。」

「来月までに治療を終えるのは無理です。」

と言われてしまい、困って別の歯医者さんにも電話して、治療可能か聞いたそうなんですが、そこでも「時間的に難しい。」と断られてしまったそうです。

そこで当院に「何とか見て貰えませんか?」とお電話でご相談を頂きました。

私は「まずお口を拝見させていただき、治療が必要かどうかも含めてお話させていただくのでお越しください。」とお伝えしました。

患者さんにその旨をご了承いただき、来院する運びとなりました。

来院当日、検査やレントゲン撮影の結果から

私の診断では・・

治療を始めてみないと、虫歯かどうか分からない歯が1本だけありました。

その1本の歯は、銀歯に若干の隙間があり、銀歯の下が虫歯になっている可能性がある歯でした。

他の歯を虫歯と診断しなかった理由については後述します。

私は「銀歯を外したら虫歯でない可能性もありますが、虫歯でないと言い切れませんので外した方がいいと思います。」とお伝えし、銀歯を外して確認したところ、実際は虫歯ではありませんでした。

虫歯ではなかったのですが、銀歯に隙間があり、いつそこから内部に虫歯が進行してもおかしくない状態でしたので、治療が無意味だったわけではありません。

レントゲン上では銀歯の下に黒い影があると、虫歯の可能性があるのですが、銀歯をくっつけている接着剤や神経を保護するセメントが黒い影に見える場合もあります。

こればかりは銀歯を外してみないと、虫歯かそうでないかは分かりません。

しかし銀歯の下が虫歯になるというのは、実はそれほど多くないのです。

銀歯の下が虫歯になる原因は、銀歯に隙間があるとか、虫歯の取り残しなどです。

たとえばこんな感じです↓ 矢印部分の銀歯に隙間があります。(記事とは別のケースです。)

歯と銀歯の境目に隙間のない銀歯の下が虫歯となるということは、あまりありません。

仮に銀歯の中に少しの虫歯を取り残していたとしても、虫歯菌は磨き残しの食べかすを餌にして生きています。

銀歯の中に虫歯菌が取り残された場合でも、銀歯に隙間が無く、外から内部に栄養(食べカスなど)が届かない場合、虫歯菌は活動することが出来ず、虫歯はほとんど進行しないといわれています。

ですので、私はレントゲン検査で銀歯の下に虫歯のように黒い影が見えても、表面から見て、上の画像のように隙間のある銀歯でなければ、積極的に虫歯と診断しない様にしています。

今までもそのように診断をしてきましたが、後で結局虫歯だったという経験はほぼ皆無です。

虫歯と診断しなかった場合でも、放置するのではなく、その後も定期的にレントゲン検査をすることで、黒い影に広がりがあれば虫歯と診断し、治療すればいいと考えています。

こちらのケースの患者さんは、その1本の歯だけを治療し、予定通り海外に行かれました。患者さんにも喜んでいただけて良かったです。