専門的な内容です。
私は普段の診療では3倍のルーペを使用していますが、ハイネの6倍、カールツァイスの8倍(製造中止品)も所有しています。
今年、カールツァイスのマイクロスコープを導入して、今毎日使っています。
まだまだ使いこなせてはいないのですが、
マイクロスコープを導入する前は、今回のタイトルのように
「高倍率ルーペは、マイクロスコープの代わりにならないの?」
と思っていました。
もちろん、マイクロスコープは20倍以上まで拡大することが出来ますので、ルーペよりも明らかに高倍率です。
しかし、マイクロスコープで実際に20倍を使用することはあまりなく、根管や破折線の確認などに用いるなど、静止状態における確認に適していると思います。
実際に20倍キープしながら動的な治療することは、ほとんどないのではないかと思います。
マイクロスコープと高倍率ルーペの決定的な違いは、ピントを調整できることだと思います。
高倍率ルーペを使えば、髄床底付近、根管口などは低倍率ルーペよりも詳しく観察出来ます。
しかし、根尖付近は見えません。ピントを合わせることが出来ないのです。
マイクロスコープであれば、ピントを合わせることと、ライトの光量を調整することで、根尖孔まで見ることが出来、根管内壁の汚染状態もしっかり見えます。
これはマイクロスコープを導入する前から分かっていたことですが、実際に使い始めて、驚きでありましたし、感動すら覚えました。
マイクロスコープがないと根管治療が出来ないわけではありませんが、根管を拡大形成した後、根管内部をマイクロスコープで覗くと、根管を綺麗にしたつもりでも、汚染物質やガッタパーチャが意外に残っているのがはっきり見えます。
また、カリエス除去についても、エナメル象牙境の取り残しやすい部分も、高倍率ルーペより明らかにハッキリと見えます。
根管の汚れやカリエスをハッキリと見ながら、除去できることは、とても大きなメリットだと思います。
また、歯肉縁下に入り込んだ接着性レジンの余剰セメント除去にも適しています。
マイクロスコープはもっともっと使い方があるのですが、現段階では、私の使い道は限定的で感想もこの程度です。
では、もう高倍率ルーペは使っていないのかといわれると、使っています。
やはりまだ、マイクロスコープを使いこなせていないので、臼歯の充填や形成は難しいです。
特に下顎臼歯はミラーテクニックを使う上に、反転した動きになりますので、マイクロスコープを使って、削るのは超高難度です。
下顎の仕上げ形成にはハイネの6倍のルーペを用いています。
最後にマイクロスコープを導入したほうがいいか否かについてです。
私はマイクロスコープを導入するのに3年ぐらい迷いました。
マイクロスコープ導入セミナーをいくつも受けて、書籍もたくさん購入して、多くのメーカーのショールームにも通い、数社からデモ機もお借りして診療で実際に使ってみました。
どの機種にするのかも迷いましたが、一番迷うのは、
使いこなせるのか?
ということです。
ここで金額は書けませんが、歯医者さんなら、どれくらいの価格の機材かはご存じだと思います。
導入を検討する中で、色々なメーカーの方に話を聞くと、やはり導入したもののホコリを被っていいるユーザーさんは結構いらっしゃるようです。
なぜそうなってしまうのか?
導入して実際に感じたことは、やはり言われていた以上に相当練習しないと使いこなせないということです。
最初は、ポジションを合わせるのも一苦労で、ルーペなら10分で終わる治療に2倍以上の時間が掛かったりしていました。
マイクロスコープセミナーでは、
100時間の壁
という言葉をよく聞きます。
「100時間くらい使わないと、普通に使えるようにならないよ。」ということです。
慣れないうちから日々の治療のすべてにマイクロスコープを使うには、時間的にも無理があります。
1日最低1回は使うように、朝に当日の予約状況を見て、マイクロスコープを使う患者さんを決めておきます。
そうして最低1回~2回を毎日おこなっても100時間となれば、相当時間がかかると思います。
多くのユーザーは、そこにたどり着くまでに心が折れてしまうのではないかと思います。
私もまだまだですが、前歯のCR充填など録画しながら診療して、後で患者さんに診て頂くと
「こんなの初めてみました!」
「こんな風に治療してるんですね。よく分かりました。」
など、とても良い反応が返ってきますので、
患者さんに歯の大切さを理解していただくためにも、精密でやり直しの少ない治療をご提供するためにも、もっと使いこなせるように引き続き頑張りたいと思います。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院