歯周病になりやすい人

「歯周病になりやすい人」で検索すると、

色々な検索結果が出てきますが、一般的には以下のよう結果が多いと思います。

  • 歯磨きをあまりしない方
  • 喫煙習慣がある方
  • 糖尿病のある方
  • 歯ぎしりや噛みしめのある方
  • 不適合な被せ物がある方
  • 歯並びが悪い方
  • 定期検診に受けていない方

あまり強調されていないのですが、実はかなり大きな割合を占める原因があります。

それは、

遺伝です。

なぜ遺伝なのかの前に、簡単に歯周病をおさらいします。

歯周病は、歯周病菌による感染症です。

 

歯垢に含まれる歯周病菌は、空気が少なくジメジメした場所が好きなので、

歯と歯ぐきの境目から歯ぐきの中に入っていきます。

 

そこで歯周病菌の深部への侵入による内部への感染拡大から逃れるための

免疫応答で破骨細胞という自分の体にある細胞が作用します。

この破骨細胞は、自分の歯槽骨を自ら破壊することで、歯周病菌から逃れようとします。

肉切らして骨を断つみたいなイメージです。

ただ、それで治ればいいのですが、歯周病はそれでは治まりません。

自ら骨を溶かすことで、歯の根の周りの歯槽骨は溶けてしまい、やがて歯は抜けてしまいます。

これは体の免疫反応ですが、この反応が過剰に働き過ぎることがあります。

歯周病の中にもいくつか種類があって、このような反応が過剰に出てしまう場合は

侵襲性歯周炎

といわれるタイプの歯周病といわれています。

一定レベルの歯磨きが出来て、定期検診を受けて、歯のクリーニングも受けているのに、歯周病が進行してしまうタイプです。

これは遺伝的要因が、かなり強いです。

ある女性の患者さんに

「うちの主人、全然歯を磨かないし、歯医者も痛いと時だけしかいかないんです!」

と言われたことがあります。

その後、実際にそのご主人が「詰め物が取れた。」と来院されたことがあります。

10年ぶりの歯医者だったようですが、お口の中を拝見すると、歯石もたっぷりついていますし、歯磨きもあまり出来ていないお口であるにもかかわらず、ほとんど歯周病がありませんでした。

では歯周病菌に感染していないのか?といわれれば、そうではありません。

様々な検査で軽度の歯周病であることは判明しています。

歯周病になっても、進行しにくい体質の方もいるのです。

これは良い遺伝ですね。

きっとご両親のどちらかも、そのような体質だと思われます。

 

今度は悪い方の遺伝の話になります。

当院でも親子で通われている患者さんが結構いらっしゃいます。

先代の頃から継続して通院されている親子の方で、親御さんが80代、お子さんが50代くらいの患者さんもいらっしゃいます。

その方々の中でも、親子で歯周病リスクの高い方がいらっしゃいます。

親御さんが重度の歯周病で、そのお子さんも既に歯周病が進行している場合などで、遺伝によるものが大きいと感じることが結構あります。

遺伝的要因が強い場合は、それを改善することは出来ないのですが、適切な処置により、進行スピードを遅らせることは可能です。

当院には過去にも「歯ぐきがしょっちゅう腫れて、2週間に1回は歯医者さんに行かなければならず、クリーニングや消毒をしてもらっている。それでも腫れや出血が治まらない。」「どうにかなりませんか?」という方がいらっしゃいました。

明らかに侵襲性歯周炎でしたが、きちんと処置を受けられて、10年近く経ち、途中1本歯を失ってしまいましたが、他の歯はなんとか持ちこたえています。

今回、歯周病になりやすい遺伝について書きましたが、別の機会で虫歯になりやすい人の遺伝的影響について書いてみようと思います。

歯周病菌についてはこちらも参考にどうぞ↓

自分の歯周病菌を見たことがありますか? 位相差顕微鏡とは?

皆様のお口の健康維持に少しでも参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

グラグラの歯を抜かない6つのデメリット

最近興味深い研究結果が発表されました。

重度の歯周病の歯を残すと、アルツハイマー型認知症の発症率が高くなるという研究結果です。

研究発表の概要↓

https://www.dent.tohoku.ac.jp/news/view.html#!955

アルツハイマー型認知症の発症と歯周病の関連については、以前から指摘されていましたが、具体的な発表はあまりなかったと思われます。

これから更なる解明が待たれます。

さて、当院でも歯はなるべく抜かずに残すようにしていますが、歯周病や虫歯、歯根破折などにより、あまりにグラグラが酷い歯や、頻繁に腫れて膿が出るような歯については、抜歯を提案することがあります。

歯医者になって25年が経ちますが、臨床的な実感からしても、このような歯を残すメリットはあまりなく、逆にデメリットの方が多いと思われます。

考えられる主なデメリットは以下の6つです。

 

1つ目のデメリットは、周りの健康な歯への影響です。

重度の歯周病でグラグラしている歯は、歯の根の深い所まで歯垢や歯石、歯周病菌が入り込んでおり、治療では取り切れないものがあります。

このような歯は常に汚れており、歯周病菌が繁殖しています。

周りの他の歯をいくら綺麗に磨いても、悪い歯から菌が繁殖されている状態になりますと、健康な歯も影響を受けてしまいます。

お風呂のカビ掃除に例えると、掃除の時に一か所だけカビを取らない場所があったとすれば、それ以外の場所をどれだけ綺麗にしても、カビがまたすぐに増えてしまうという感じです。

 

2つ目のデメリットは耐性菌の問題です。

抜歯するかしないかは、患者さんのご希望を第一に尊重しますので、抜歯せずにそのままにする場合もありますが、やはり急に腫れたり、痛みが出ることがことが多く、その場合は抗生物質を出すことがあります。

抗生物質を頻繁に服用すると耐性菌という抗生物質が効かない菌が生まれてしまうこともあります。

 

3つ目のデメリットは全身への影響です。

現在、歯周病が様々な形で全身への影響を与えることが分かっています。

誤嚥性肺炎、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、リウマチ、骨粗鬆症など歯周病が悪化すると影響を及ぼす病気はたくさんあります。

歯周病でグラグラの歯には常に歯周病菌が繁殖していますので、そのリスクが高まるということです。

 

4つ目のデメリットはその後の治療への影響です。

重度の歯周病でグラグラしているということは、歯の根の周りの骨が溶けて無くなっているということです。

そのような歯を抜歯すると、その部分の骨はほとんど残っていません。

骨が残っていないということは、骨の上にある歯ぐきも大幅に無くなってしまいます。

そうすると、抜いた後に抜けた歯を補う治療にも不利になります。

入れ歯なら、痩せた骨の上では安定せず、痛みが出やすくなります。

ブリッジなら、汚れが残りやすくなります。

インプラントなら、骨が痩せすぎると治療そのものが無理になってしまったり、大幅な造骨手術(骨移植)が必要になります。

このように歯周病が極限まで進行すると、後の治療に大きな影響が及びます。

 

5つ目のデメリットは口臭の問題です。

繰り返しになりますが、重度の歯周病に侵されてグラグラの歯は、歯周病菌が大量に繁殖していますので、歯周病菌の出す悪臭により、ガムを噛んだり、歯を磨いたり、歯医者さんでクリーニングを受けても、口臭が治まらない場合があります。

口臭についてはこちらも参考にどうぞ↓

口臭の原因の6割は○○

 

6つ目のデメリットは噛み合わせの問題です。

重度の歯周病の歯はグラグラしていて、噛むと痛かったり、噛みにくいので、そこでは噛まずに、健康な歯で噛もうとします。そのことによって、健康な歯に過剰な負担がかかり、傷めてしまうことがあります。

 

以上のようなデメリットがあります。こうして文章にまとめると、改めてデメリットが多いことに気づかされます。

逆に歯を抜くメリットとしては、重度の歯周病の歯を抜歯したことで、体調が良くなったり、お口全体が綺麗になった患者さんをたくさん見てきました。

また、上記の①~⑥のデメリットが減るというのも、大きなメリットといえます。

抜歯は患者さんにとっても、歯科医にとっても、出来れば避けたい治療です。

どんな歯でも抜かずに患者さんの希望を尊重して、残しておく方が患者さん受けはいいかもしれません。

しかし、周りの健康な歯や全身に悪い影響を与えている状態でも残すことには疑問を感じます。

患者さんも単に歯を抜きたくないという気持ちだけではなく、

「歯を抜くのが怖い。」

「歯を抜いた後にどうなるのか?」

「入れ歯になるのか?」

「インプラントを勧められるのか?」

「他の歯もどんどん抜かれるんじゃないか?」

「そのうち総入れ歯になってしまうんじゃないか?」

など、歯を抜くことそのものよりも、その後について不安を感じていらっしゃることが多いので、当院では抜歯を説明する場合は、歯を抜いた後どういう治療方法があるのか?その患者さんのお口の将来像について丁寧に説明しています。

また、他の医院で抜歯の診断を下され、抜歯するか迷われてセカンドオピニオンで来院される患者さんも結構いらっしゃいます。

拝見すると、グラグラでも歯の状態によっては、抜かなくてもいい歯もありますし、抜いたほうがいいと診断する歯もあり、それぞれです。

迷われた場合は、他の医院でセカンドオピニオンを受けてみることをお勧めします。

抜くにしても、残すにしても、患者さんが納得されていることが一番大切なことだと思います。

Baby tooth extraction. Surgery of children’s teeth, concept.

 

以上「グラグラの歯を抜かない6つのデメリット」でした。

皆様のお口の健康増進のために参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

「歯石が多すぎて取れない…。」

10数年ぶりに歯科医院に来られた患者さんです。

歯石がかなり溜まっていましたので「今まで歯石取りされたことがありますか?」とお聞きしたところ…

10数年前に行った歯医者さんに、

「歯石が多すぎて、うちでは取れないから、ちゃんと取ってくれる歯医者さんに行ったほうがいいよ。」と言われ、少しだけ歯石を取って終わったそうです。

そのお話を聞いて、少し驚きましたが、当院ではどんなに歯石多くても希望があれば歯石は全部取ります。(普通はそうです…)

この方の最初の状態がこちらです↓下の前歯の裏側の写真です。

歯が歯石で埋もれて見えなくなってしまっています。

今まで大量に歯石がついた患者さんを何人も見てきましたが、その中でもかなり多いほうだと思います。

患者さんには歯石を放置しているとどうなるか、まず図を用いて歯周病について説明し、歯石の量が多いので、1回では取り切れないこと、大量の歯石を取ると一過性の知覚過敏を起こす可能性があることを事前に説明してから歯石取りを始めました。

1回目の歯石取り後がこんな感じです↓

歯石に埋もれていた歯がしっかり見えるようになりましたね。

まだ細かい歯石が残っていますが、これは後日引き続き綺麗にします。

歯石を大量に取った後は、歯と歯ぐきの境目辺りが、知覚過敏になりやすいので、知覚過敏用のジェルもあらかじめ塗布しておきました。

これから数回に渡って、痛くないように歯石を取って、歯周病を治療・予防していきます。

当院では痛くない、辛くない歯石取りを心がけています。

歯石は取って欲しいけど、過去の歯石取りが痛かった、凍みたなどで、怖くなってしまった方、お気軽にご相談下さい。

以上「歯石が多すぎて取れない…。」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

マウスピースの重要性 

院長の笹山です。

今回はマウスピースの重要性ついてのお話です。

マウスピースは色々なお口のトラブルを未然に防ぐことが出来ます。

私自身も歯ぎしりや噛み締めが酷いので、もう5年以上マウスピースを装着しています。

マウスピースには用途に応じて、ゴムタイプとプラスティックタイプがあります。

プラスティック製のマウスピース↓

ゴム製のマウスピース↓

歯ぎしりや噛み締める力は、100キロ近いといわれています。マウスピースがクッションになって、その巨大な力が歯や顎にかかることを軽減出来ます。

マウスピースをしていないと…

①歯がすり減ってしまったり

②歯が欠けたり、割れたり、

③知覚過敏になったり、

④顔の周りの筋肉が凝ったり、

⑤顎関節症になったり、

⑥偏頭痛が起こったり、

⑦詰め物や被せ物が外れたり、

⑧口が開きにくくなったり、

⑨歯にヒビ入って虫歯になったり、

⑩歯周病で弱った歯が抜けてしまったり、

もう本当に数え切れないほど、お口とその周りに悪影響を及ぼします。

実は、先ほどの2個のマウスピースには多少問題があります。

画像を見てお分かりでしょうか?

プラスティック製のマウスピースは、歯ぎしりによってプラスティックが削れています↓ ちょっと分かりにくいですが、白く濁っている部分です。

ゴム製のマウスピースは穴が空いてしまっています↓

いかがでしょうか?

マウスピースは寝る時だけ装着するのですが、すり減って傷がついたり、穴が空いてしまうこともあるのです。

もしマウスピースをしていなかったら…このダメージを歯や顎関節が直接受けてしまい、上記①~⑩のような問題が起こる可能性があるのです。

ちなみに上記の⑨の”歯にヒビが入って虫歯になる”メカニズムですが、歯ぎしりや噛み締めの負荷によって、歯に細かいヒビが入って、そこから虫歯菌が歯の内部に侵入することで発生します。

実際の様子は、こちらの記事でご覧いただけます↓

歯と歯の間に虫歯ができる原因

 

成人の9割以上は歯ぎしり・噛み締めをしています。

私は歯医者になって20年以上過ぎましたが、歯ぎしりや噛み締めが大きな問題を引き起こすケースをたくさん見てきました。

TCH 歯列接触癖 噛み締め 食いしばり

当院ではマウスピース治療に力を入れています。

・歯ぎしり、噛み締め用

・顎関節症用

・睡眠時無呼吸症候群用

など症状に合わせて、最適なマウスピースを提案しています。

以上「マウスピースの重要性」でした。

今回もご覧いただきありがとうございました。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

拡大鏡(ルーペ)を用いた歯石取り

院長の笹山です。

歯医者さんでは治療する歯や歯ぐきがよく見えるように、拡大鏡(ルーペ)を用いることがあります。

歯を削る時にもルーぺは使用しますが、歯石取りやクリーニングでもルーペは有効です。歯石や歯垢を徹底的に取ることで虫歯や歯周病は予防出来ますので、そのためにまず”汚れ”がちゃんと見えることが大切です。取ったつもりでも見えていなければ、取れていない⤵

6倍の倍率で見るとこれくらいで見えます↓

以前は歯石取りまでルーペは使わなくても…という考えでしたが、現在はほとんどのすべての治療で使用しています。

私が使用しているルーペは、サージテルというメーカーもので、歯科に限らず、脳神経外科、心臓血管外科、形成外科など、細かい部位を見ることを必要とされる外科系のドクターが好んで使用しているメーカのものです。

ルーペを装着するとこんな感じです↓ ちょっと見た目がロボチックで怖いかもしれませんが、より良き治療のためです。

ルーペは倍率が高ければ高いほど、よく見えるのですが、歯石取りは歯だけでなく、歯ぐきや喉に溜まったお水などを確認するために、お口全体を見回しながら行うので、3倍くらいの倍率がお口全体を見渡しつつ、歯石をしっかり確認出来る適正な倍率だと思っています。

ちなみに当院では歯科衛生士だけでなく、歯科医師も歯石取りやクリーニングをおこなっています。

「歯石取りって歯科衛生士がすることじゃないの?」

と思われるかもしれませんが、実は歯科医師も歯科医師免許を取得するために学生の時に歯石取りの授業や実習が必須になっており、免許取得後も歯科医師が自ら歯石取りをおこなうのは普通のことなんです。

私自身は歯石取り歴15年くらいで、当院では重い歯周病の患者さんのほとんどは私が担当していますので、ご安心ください。

以上「拡大鏡(ルーペ)を用いた歯石取り」についてでした。