インプラントの失敗

院長の笹山です。

インプラントの失敗。

歯科医も患者さんも出来れば経験したくないことですね。

失敗といっても色々な失敗があるのですが、

ここでは、

「インプラント手術後にインプラントが骨にくっつかなかった。」

について説明します。

通常インプラントは、術後約3か月程度で骨に結合します。

結合のプロセスについてはこちら↓

インプラントの結合度を調べる。

インプラントが骨に結合しましたら、インプラントの上に被せ物を付けるのですが、その前にインプラントが抜けてしまうことがあります。

つまり骨に結合しなかったということです。

結合しないのには、色々な原因があるのですが、

インプラントを入れた時に、

インプラントが骨に固定されずに、緩すぎる状態で入ってしまった場合や、

逆に骨にかなりの力で入れてしまった場合に起こります。

例えますと、

木の板にネジを入れる時に、

ネジがユルユルで入ってしまった場合と、

板にヒビが入るくらいの強い力でネジを入れた場合です。

緩すぎると抜けますし、きつ過ぎると周りにダメージが加わってしまうのです。

また、インプラントを入れる際の冷却が足りなくて、骨が火傷を起こしてしまった場合などにも、インプラントがくっ付かなくなるといわれています。

インプラントはドリルで骨に穴を開けるので、ドリルが高温になって骨が火傷を起こさないように、常に冷えた生理食塩水を注水してドリルを冷やしているのですが、骨の深い位置にインプラント入れる場合は、その冷却が届きにくい場合があります。

下図の赤矢印部分がドリルに注水して冷却している様子。

*日本歯科医師会HPより引用

他の原因では、インプラントを入れる骨自体の質が、そもそも良くなかったいうこともあります。

手術に完璧はないのですが、これらリスクは術者が気を付けることで基本的には回避できます。

これらの問題がなくても、稀に原因不明でインプラントが結合しない場合もありますので、失敗というのは少し厳しい言い方かもしれません。

インプラントが初期の段階で抜けてしまった場合に

「自分の骨にはインプラントが合わないのかな…。」

と思われるかもしれませんが、

再手術すれば、問題なくインプラントがくっ付く場合が多いです。

なぜなら一度インプラントを埋めるために開けた穴は、新しく綺麗な骨で埋まるからです。

ですので、インプラントが上手く結合しなくても、

再手術という精神的・肉体的な負担はありますが、もう一度手術を受ける価値はあると思います。

以上「インプラントの失敗」でした。

皆様のお口の健康に参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

 

インプラントなんか体に入れて大丈夫なんですか?

インプラントの説明時に患者さんからよく聞かれる質問の1つです。

「インプラントみたいな金属を体に入れて大丈夫なんですか?」

金属を骨に入れたままにして、体に異常が起きないかとか、金属は錆びたりしないかと、体に安全かどうかの不安だと思います。

体に悪影響はないかという点においては、

「大丈夫です。」

といえます。

大丈夫な理由を説明していきます。

皆さん、骨折した時にプレートで骨を固定することがあるってご存じですか?(ご存じない方は、「骨折 プレート」でネット検索してみてください。)

骨折した部分を金属製のプレートでつなぎ合わせて、金属製のボルトでしっかり固定することにより、骨がくっつきやすくなります。

昔はそういう方法がなかったので、ギブスでグルグル巻きにして、自然にくっつくのを待ってたんですよね。

私も子供の頃に腕を骨折して、石膏に浸したガーゼで腕が倍の太さになるくらいのギブスをつけました。夏だったので、中が蒸れて、痒くて辛かったのを覚えています。

話を戻します。

そのプレートはチタンという金属で出来ています。

プレートを固定するボルトもチタンで出来ています。

チタンは骨に入れても、腐食したり、アレルギーを起こしにくい素材です。

ちなみに骨折が治った後も、プレートを外さないで入れたままでも、基本的に害はありません。*入れた場所によっては、取り出すこともあります。

それを取り出すには、また皮膚を切って手術しなければならないので、「せっかく骨が治ったのに、また手術するの?」ってなりますよね。

骨にずっと入れっぱなしでも問題が起きにくい金属材料、それがチタンです。

そこからヒントを得て、だったら、「歯の根っこの代わりに使えるんじゃない?」

と始まったのが、現代のチタン製インプラントです。

 

インプラントはネジの形をしています。

Dental implant isolated on white background

釘のようにツルツルの表面ではなく、ネジの形をしているのは、骨に入れる時に、骨に食い込ませて固定を良くするためです。

それと、ネジのように凸凹している方が、骨との接触面積が大きくなり、くっつきが強固になるからです。

インプラントは一度骨にくっ付くと、反対回しに回しても抜けません。

普通のネジはドライバーで逆回転したら抜けますね。

チタン製のインプラントは単に骨に食い込んでいるだけでなく、オッセオインテグレーションという形で骨と結合します。

「じゃあ、どうやっても抜けないの?」

というわけでもなく、かなりの力を逆回転で加えると、周りの骨が壊れながら、外れます。

しかし、日常生活の食事などで加わる力では抜けません。

ということで、チタン製インプラントは長期間、骨に入れても大丈夫であり、体に安全な治療といえます。

ただし、チタンも金属ですので金属アレルギーの可能性がないわけではありません。

実際にインプラントをおこなった患者さんにチタンアレルギーの検査をおこなったところ、アレルギー性陽性の反応が出る方が稀にいらっしゃるようです。

しかし、陽性の検査結果が出ても臨床的なアレルギー症状はほとんどないそうです。

ですので、心配な方は手術前にチタンアレルギーのパッチテストを受けられるといいと思います。

以上「インプラントなんか体に入れて大丈夫なんですか?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

寝たきりになってもインプラントは大丈夫なの?どうなるの?

患者さんにインプラントの説明をした時に聞かれた質問です。

「先生、もし寝たきりになってメンテナンスに通えなくなったら、インプラントはどうなるんですか?」

その患者さんは、お友達のお友達からのまた聞きで

「寝たきりになったらインプラントは抜かなきゃいけない。」

と聞いて不安になったそうです。

まずなんですが、

寝たきりになったり、歯医者さんに通院出来なくなっても、インプラントを抜く必要はありません。

何かの聞き間違いか、勘違いだと思います。

そのままで問題ありません。

例外的に、インプラント以外のご自身の歯が抜けてしまって、インプラントの歯だけが残ってしまい、食事で邪魔になったとします。*そのようなことは、ほぼ無いのですが…。

また、介護が必要になって、口腔ケア(お口の中を綺麗してもらうこと)をする際にインプラントの本数や被せ方によっては、介護者にとってケアの妨げになることもあるそうです。

「インプラントを外したい。外して欲しい。」

その場合は、以下のようにします。模型で説明しますね。

*分かりやすいように、模型の歯ぐきは外してあります。

インプラントに被せ物が入っている状態です。

 

被せ物を外すと土台が見えます。

 

下の図のように、土台が無い場合もあります。

被せ物や土台を外すと、歯ぐきと同じ高さ、もしくはそれより低い位置にインプラントの”てっぺん”がきます。模型に歯ぐきを戻しました。

この時点で、骨の中にインプラントは残るけれど、歯ぐきより上に、歯(被せ物)が無いので、歯を抜いた(歯が無い)のと同じように、フラットな状態になります。

この状態なら、口の中に残っていも、邪魔になりませんね。

このようにすることを、

スリープ

といいます。

被せ物を外して、インプラントの噛む機能を停止する(寝かせる)ということです。

この状態でインプラントを骨に入れたままでも、基本的に問題はありません。

歯ぐきと同じ高さなので、食事や会話の邪魔にもなりません。

現在、日本でインプラント治療を受けた方は200万人を超えているといわれています。

約40年前から日本で始まったインプラントが普及し、若い時にインプラントを入れた方もご高齢になっています。

そのような方が寝たきりになったり、通院が出来なくなった時に備えて、インプラントの被せ物は接着剤ではなく、ネジで固定し、ネジを回せば、すぐに外れるようになっています。

初期の頃は接着剤で被せ物を装着することも多かったのですが、近年では、このような事情やその他を踏まえて、ほとんどの被せ物がネジ止めになっています。

またスリープしたインプラントをそのままにせず、新しく入れ歯を作って、入れ歯の下に潜り込ませて、インプラントの”てっぺん”に磁石をつけて(下の画像左)、入れ歯を外れにくくしたりと、転用して生かすことも出来ます。

上から入れ歯を入れることで、入れ歯の沈み込みを押さえてくれる。

マグネット入れ歯の一例↓

このように、たとえ通院できなくなっても、インプラントを抜く必要はありません。

ちなみに当院のインプラントは、上記のような柔軟な対応が出来るように、被せ物は、接着剤ではなく、すべてネジ止めにしています。

これなら、急に通院出来なくなった上に、被せ物を外さなければならなくなっても(あまりないケースですが)、私が患者さんの元へ行けば、5分もあれば、痛みもなくすぐに外すことが出来ます。

もちろん私じゃなくても、インプラントの知識がある歯医者さんなら、同じことが出来ます。

注)ネジ止めのインプラントに限ります。

以上「寝たきりになってもインプラントは大丈夫なの?どうなるの?」でした。

皆様のお口の健康維持に少しでも参考になれば幸いです。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

インプラント手術は痛いですか?

初めてインプラント治療を受ける患者さんに、インプラント治療の説明をした後に、

「何か分からないこと、聞いておきたいことはありますか?」とお聞きすると

多くの患者さんが質問されるのが

「インプラントって痛いですか?」

です。

歯ぐきを切って、骨にドリルで穴を開けて、チタン製のネジを埋め込む。

普通に考えれば、怖いですし、痛そうですよね。

結論から言いますと、

ほぼ痛くありません。

「私の手術が上手いから痛くないんです!」と言いたいわけでありません。

私の手術技量は普通です。ただ、普通に丁寧に手術をおこなえば、どんな先生がおこなっても痛みは、ほぼありません。

何故か?

その理由を説明しますね。

まず手術前に局所麻酔をおこない、十分に麻酔が効いてから手術をおこないますので、手術中の痛みはありません。

まれに手術の終わりが近づき、縫合をするぐらいの時に麻酔が切れてきて、少し痛みを感じることもありますが、その際はすぐに麻酔を追加するので、痛みは無くなります。

手術後ですが、当院の患者さんの感想では帰宅後に頓服の痛み止めを一度も服用されていない方が多いです。

歯ぐきを切って、骨に穴を開けているのに何故痛くないのか?

まず手術はケガではありません。

ケガをして、皮膚が切れたり、骨が折れると痛いですよね。

それはキレイに切れたり、折れていないからです。

多くの方がご存じないのですが、骨の中には神経はほぼありません。

では骨折した時に痛いのは何故なのか?

下の図の骨膜(青囲い)というものに注目してご覧ください。

骨は、骨膜という薄い膜で覆われています。

へんな例えになりますが、

KFCフライドチキンを食べた後に残った骨を思い出してください。

骨の表面に透明の膜がついているのを見たことがないですか?

あれが骨膜です。

骨膜には神経があります。

骨折した時の痛みは、骨膜が切れた痛みや、骨の周りの組織のダメージによる痛みがほとんどで、折れた骨の内部の痛みではありません。

インプラントをする際は、歯ぐきと歯ぐきの下にある骨膜を切って、歯ぐきを切り開き、骨から骨膜ごと歯ぐきを剥がして、骨の表面を露出して、穴を開けていきますが、剥がした骨膜は、あとで元の位置に戻しますので、痛みはあまり出ないのです。

ちなみに剥がすというのは、取り去るのではなく、めくるということです。

一時的にめくるだけで、体からは完全に離断(離れる)わけではありません。

また、メスで歯ぐきを切って開きますが、それも綺麗に切って、綺麗に縫い合わせれば、

ケガのように挫滅創にならないので、痛みは少ないのです。

つまりケガのように大きな外力で組織が挫滅したりするのではなく、元通りに縫い合わせる前提で綺麗に切り、縫合し、縫い合わせれば、一次創傷治癒という綺麗な傷になり、痛みは出にくいのです。

当然ですが、雑に切って、雑に剥がして、雑に縫い合わせれば、腫れて痛みも出ます。

骨折の場合は、骨の周りの骨膜が切れてしまっても、皮膚を切り開いて骨膜を縫うこと出来ません。皮膚の中で骨膜が切れたままなので痛いんです。

ではインプラント手術後に痛い場合というのは、どんな場合でしょうか?

① 手術が長引いた場合。

歯ぐきを開いて、露出した骨が空気に触れている時間が長いと痛みが出やすくなります。

ですので手術中は常に手術部位が乾燥しないように生理食塩水で湿らせる必要があります。

② 骨造成や軟組織移植など大きな追加手術をおこなった時。

インプラントを埋めたい場所の骨が痩せていたりする場合は、骨造成や骨移植で骨を増やしたり、歯ぐきが少ない場合は、歯ぐきの移植をおこなわなければなりません。詳細な説明は避けますが、こういう処置は術後の痛みは出ますし、腫れます。それは当然なので、先生が下手なわけではありません。

以上のことから、

①痛くないようにしっかりと麻酔を効かせる。

②綺麗に切って、綺麗に縫う。

③なるべく早く手術を終える。

の3つを心掛ければ、

骨造成など複雑な処置を伴わない一般的なインプラント手術の痛みは、ほとんどないといえます。

もう1つ痛みを出さないために大事なことがあります。

それは手術前の段階で、お口の中が綺麗で歯ぐきが引き締まっていることです。

ちゃんと歯磨きをして、定期検診でクリーニングを受けて、歯周病ではない健康な歯ぐきであることです。

ブヨブヨと腫れて、すぐに出血するような歯ぐきですと、術後の腫れや傷みは出やすくなりますし、そもそもそのような状態でインプラントをしても、インプラント周囲炎というインプラントの歯周病にかかってしまい、インプラントが抜けてしまう可能性が高いです。

インプラントを受ける方は歯周病を治療して、良い状態の歯ぐきを得てから手術を受けることをお勧めします。

以上「インプラント手術は痛いですか?」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院

 

ブリッジをやめて歯の喪失リスクを下げる。

院長の笹山です。

インプラントの最も効果的な使い方の1つが、

今あるブリッジをやめて、インプラントに変更することです。

画面右下に古いブリッジが入っています。

レントゲン写真です。

 

このブリッジの1番のリスクは手前側の歯(青矢印)の歯に神経が無く、メタルコアといわれる金属の土台が入っていることです。

いずれ歯根破折を起こして抜歯になる可能性が非常に高いです。

歯根破折についてはこちら↓

歯根破折

神経が無くて、金属のメタルコアが入っているだけでも、歯根破折のリスクがあるのに、その歯をブリッジに使っているので、更に過重負担となります。

ブリッジは上にある歯の本数より、少ない数の歯で支えるという、そもそも歯に過剰な負担をかける治療です。

この場合ですと、3本分の歯があるのに、根は2本しかないという状態で、単純に計算しても1本につき、1.5倍の負荷がかかることになります。

治療の経過です。

ブリッジをやめて、真ん中の元から無い歯の部分にインプラントをおこないました。

これでインプラント前後の歯が抜歯になる可能性が大幅に減りました。

手前側の金属の土台が入った歯は、近いうちにメタルコアを除去してファイバーポストに置き換えて、更に喪失リスクを下げる予定です。

抜歯を防いだファイバーポスト

「歯が無くて困っているが、入れ歯にはしたくない。」

「ブリッジは歯を傷めるのでしたくない。」

「入れ歯をやめて、固定性に歯にしたい。」

これらは患者さんがインプラント治療を選ぶポピュラーな理由です。

しかし、実は今あるブリッジを将来の歯の喪失に備えて、インプラントに変えておくことも非常に意味のある治療です。

歯のクリーニングや歯石取りは、歯を喪失しないための予防です。

ブリッジをインプラントに変えることも、歯を喪失しないための予防です。

ですので、広い意味ではインプラントも歯を失わないための予防治療と言えるかもしれません。

以上「ブリッジをやめて歯の喪失リスクを下げる。」でした。

宝塚市の歯医者 笹山歯科医院