患者さんにインプラントの説明をした時に聞かれた質問です。
「先生、もし寝たきりになってメンテナンスに通えなくなったら、インプラントはどうなるんですか?」
その患者さんは、お友達のお友達からのまた聞きで
「寝たきりになったらインプラントは抜かなきゃいけない。」
と聞いて不安になったそうです。
まずなんですが、
寝たきりになったり、歯医者さんに通院出来なくなっても、インプラントを抜く必要はありません。
何かの聞き間違いか、勘違いだと思います。
そのままで問題ありません。
例外的に、インプラント以外のご自身の歯が抜けてしまって、インプラントの歯だけが残ってしまい、食事で邪魔になったとします。*そのようなことは、ほぼ無いのですが…。
また、介護が必要になって、口腔ケア(お口の中を綺麗してもらうこと)をする際にインプラントの本数や被せ方によっては、介護者にとってケアの妨げになることもあるそうです。
「インプラントを外したい。外して欲しい。」
その場合は、以下のようにします。模型で説明しますね。
*分かりやすいように、模型の歯ぐきは外してあります。
インプラントに被せ物が入っている状態です。
被せ物を外すと土台が見えます。
下の図のように、土台が無い場合もあります。
被せ物や土台を外すと、歯ぐきと同じ高さ、もしくはそれより低い位置にインプラントの”てっぺん”がきます。模型に歯ぐきを戻しました。
この時点で、骨の中にインプラントは残るけれど、歯ぐきより上に、歯(被せ物)が無いので、歯を抜いた(歯が無い)のと同じように、フラットな状態になります。
この状態なら、口の中に残っていも、邪魔になりませんね。
このようにすることを、
スリープ
といいます。
被せ物を外して、インプラントの噛む機能を停止する(寝かせる)ということです。
この状態でインプラントを骨に入れたままでも、基本的に問題はありません。
歯ぐきと同じ高さなので、食事や会話の邪魔にもなりません。
現在、日本でインプラント治療を受けた方は200万人を超えているといわれています。
約40年前から日本で始まったインプラントが普及し、若い時にインプラントを入れた方もご高齢になっています。
そのような方が寝たきりになったり、通院が出来なくなった時に備えて、インプラントの被せ物は接着剤ではなく、ネジで固定し、ネジを回せば、すぐに外れるようになっています。
初期の頃は接着剤で被せ物を装着することも多かったのですが、近年では、このような事情やその他を踏まえて、ほとんどの被せ物がネジ止めになっています。
またスリープしたインプラントをそのままにせず、新しく入れ歯を作って、入れ歯の下に潜り込ませて、インプラントの”てっぺん”に磁石をつけて(下の画像左)、入れ歯を外れにくくしたりと、転用して生かすことも出来ます。
上から入れ歯を入れることで、入れ歯の沈み込みを押さえてくれる。
マグネット入れ歯の一例↓
このように、たとえ通院できなくなっても、インプラントを抜く必要はありません。
ちなみに当院のインプラントは、上記のような柔軟な対応が出来るように、被せ物は、接着剤ではなく、すべてネジ止めにしています。
これなら、急に通院出来なくなった上に、被せ物を外さなければならなくなっても(あまりないケースですが)、私が患者さんの元へ行けば、5分もあれば、痛みもなくすぐに外すことが出来ます。
もちろん私じゃなくても、インプラントの知識がある歯医者さんなら、同じことが出来ます。
注)ネジ止めのインプラントに限ります。
以上「寝たきりになってもインプラントは大丈夫なの?どうなるの?」でした。
皆様のお口の健康維持に少しでも参考になれば幸いです。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院