初めてインプラント治療を受ける患者さんに、インプラント治療の説明をした後に、
「何か分からないこと、聞いておきたいことはありますか?」とお聞きすると
多くの患者さんが質問されるのが
「インプラントって痛いですか?」
です。
歯ぐきを切って、骨にドリルで穴を開けて、チタン製のネジを埋め込む。
普通に考えれば、怖いですし、痛そうですよね。
結論から言いますと、
ほぼ痛くありません。
「私の手術が上手いから痛くないんです!」と言いたいわけでありません。
私の手術技量は普通です。ただ、普通に丁寧に手術をおこなえば、どんな先生がおこなっても痛みは、ほぼありません。
何故か?
その理由を説明しますね。
まず手術前に局所麻酔をおこない、十分に麻酔が効いてから手術をおこないますので、手術中の痛みはありません。
まれに手術の終わりが近づき、縫合をするぐらいの時に麻酔が切れてきて、少し痛みを感じることもありますが、その際はすぐに麻酔を追加するので、痛みは無くなります。
手術後ですが、当院の患者さんの感想では帰宅後に頓服の痛み止めを一度も服用されていない方が多いです。
歯ぐきを切って、骨に穴を開けているのに何故痛くないのか?
まず手術はケガではありません。
ケガをして、皮膚が切れたり、骨が折れると痛いですよね。
それはキレイに切れたり、折れていないからです。
多くの方がご存じないのですが、骨の中には神経はほぼありません。
では骨折した時に痛いのは何故なのか?
下の図の骨膜(青囲い)というものに注目してご覧ください。
骨は、骨膜という薄い膜で覆われています。
へんな例えになりますが、
KFCフライドチキンを食べた後に残った骨を思い出してください。
骨の表面に透明の膜がついているのを見たことがないですか?
あれが骨膜です。
骨膜には神経があります。
骨折した時の痛みは、骨膜が切れた痛みや、骨の周りの組織のダメージによる痛みがほとんどで、折れた骨の内部の痛みではありません。
インプラントをする際は、歯ぐきと歯ぐきの下にある骨膜を切って、歯ぐきを切り開き、骨から骨膜ごと歯ぐきを剥がして、骨の表面を露出して、穴を開けていきますが、剥がした骨膜は、あとで元の位置に戻しますので、痛みはあまり出ないのです。
ちなみに剥がすというのは、取り去るのではなく、めくるということです。
一時的にめくるだけで、体からは完全に離断(離れる)わけではありません。
また、メスで歯ぐきを切って開きますが、それも綺麗に切って、綺麗に縫い合わせれば、
ケガのように挫滅創にならないので、痛みは少ないのです。
つまりケガのように大きな外力で組織が挫滅したりするのではなく、元通りに縫い合わせる前提で綺麗に切り、縫合し、縫い合わせれば、一次創傷治癒という綺麗な傷になり、痛みは出にくいのです。
当然ですが、雑に切って、雑に剥がして、雑に縫い合わせれば、腫れて痛みも出ます。
骨折の場合は、骨の周りの骨膜が切れてしまっても、皮膚を切り開いて骨膜を縫うこと出来ません。皮膚の中で骨膜が切れたままなので痛いんです。
ではインプラント手術後に痛い場合というのは、どんな場合でしょうか?
① 手術が長引いた場合。
歯ぐきを開いて、露出した骨が空気に触れている時間が長いと痛みが出やすくなります。
ですので手術中は常に手術部位が乾燥しないように生理食塩水で湿らせる必要があります。
② 骨造成や軟組織移植など大きな追加手術をおこなった時。
インプラントを埋めたい場所の骨が痩せていたりする場合は、骨造成や骨移植で骨を増やしたり、歯ぐきが少ない場合は、歯ぐきの移植をおこなわなければなりません。詳細な説明は避けますが、こういう処置は術後の痛みは出ますし、腫れます。それは当然なので、先生が下手なわけではありません。
以上のことから、
①痛くないようにしっかりと麻酔を効かせる。
②綺麗に切って、綺麗に縫う。
③なるべく早く手術を終える。
の3つを心掛ければ、
骨造成など複雑な処置を伴わない一般的なインプラント手術の痛みは、ほとんどないといえます。
もう1つ痛みを出さないために大事なことがあります。
それは手術前の段階で、お口の中が綺麗で歯ぐきが引き締まっていることです。
ちゃんと歯磨きをして、定期検診でクリーニングを受けて、歯周病ではない健康な歯ぐきであることです。
ブヨブヨと腫れて、すぐに出血するような歯ぐきですと、術後の腫れや傷みは出やすくなりますし、そもそもそのような状態でインプラントをしても、インプラント周囲炎というインプラントの歯周病にかかってしまい、インプラントが抜けてしまう可能性が高いです。
インプラントを受ける方は歯周病を治療して、良い状態の歯ぐきを得てから手術を受けることをお勧めします。
以上「インプラント手術は痛いですか?」でした。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院