院長の笹山です。
インプラント治療の話です。
歯医者さんでインプラントをすすめられたけど、迷っている。
こんな時にどう考えるのかについてです。
歯医者さんにインプラントをすすめられる場合は、次の2パターンが主です。
① 今ある歯を抜いて、インプラントをすすめる。
② 既に歯が無いところに、インプラントをすすめる。
②の既に歯が無いところにインプラントをすすめる。については、別の機会にブログにします。
今回は、①の今ある歯を抜いてインプラントをすすめる。
をどう考えるかについてお話します。
この場合に大事なことは、「まず、そもそも、その歯が本当に抜歯が必要なのか?」ということです。
歯医者さんによって、抜歯の基準は様々です。
大体の歯医者さんは、平均的な抜歯の基準を持っていますが、なかには…
「えっ…何でこの歯を抜歯?」と思う歯を抜歯と診断する歯医者さんもいます。
注)健康な歯を抜歯することはないと思いますが、まだ治療の余地があるのに、積極的に抜歯してインプラントをすすめる歯医者さんです。
当院にも他院で”抜歯してインプラント”を勧められたけど、セカンドオピニオンを聞きたいと来院される患者さんがいらっしゃいます。
以前には、こんなことがありました。
「抜歯してブリッジかインプラントにしましょう。」と言われて、当院にセカンドオピニオンを求めてきた患者さんです。
その歯を診察したところ、歯の神経が抜いてありましたので、100%健全とは言えない歯でしたが、普通に補強して被せ物をすれば済むような歯でした。
しかし「何処かの歯医者さんが、この歯を抜歯と診断したのだから、見えにくい問題がどこかに隠れているかもしれない、見逃しがあってはいけない。」と慎重に、CT撮影など、あらゆる角度から検査をおこない、本当に細かく診察しましたが、どう考えても抜歯の必要のない、十分に残せる歯でした。
結局、その歯は被せ物をして5年以上経ちますが、何の問題もなく機能しています。
このような残せる歯を抜歯して、インプラントを勧める理由として考えられるのは、
① 誤診
② 経営
です。
①の誤診については、何かの勘違いとしか思えないのですが、あまりないと思います。
②についてはあまり信じたくはないのですが、インプラントで儲けようと考えている歯医者さんは一定数います。そして積極的に抜歯を勧めています。その理由はいくつかあります。
1)早く抜いたほうがWinWin?
抜歯しなければいけないほど歯が悪くなっている場合は、周りの歯ぐきや骨も少なからずダメージを受けています。
歯ぐきや骨は、家でいうと土地や基礎の部分です。
家を壊して、建て直すのにも、土地や基礎が傷んでいれば、簡単に家は建て直せなくなります。
周りの歯ぐきや骨に大きなダメージを受けた状態でインプラントをする場合は、ただインプラントを埋めるだけではなく、増骨(GBRといわれます)や歯ぐきの移植などの追加手術が必要になる場合もあります。
歯がまだ残せるような状態で抜いておけば、歯ぐきや骨のダメージは少ないので、後でインプラントする時に、術者はやりやすいのです。
患者さんも追加手術が無い分、楽ではありますので、あながち間違った考えとは言えません。
とはいえ、少しでも周りにダメージを与えている歯は、早く抜歯してインプラントにするというのは、出来るだけ歯を残したい患者さんの気持ちを考えると、過剰(オーバートリートメントといいます)だといえます。
歯を残す技術があれば、状態にもよりますが、10年以上抜かなくて済む場合もありますし、周りのダメージが少々でしたら、抜歯して数か月待てば、インプラントをするのに差し支えない程度まで歯ぐきや骨は回復します。
*大規模なダメージがある場合は、早く抜いたほうがいい場合もあります。
アメリカでは一時期、信じられないような抜歯基準(どう考えても残せる歯)で歯を抜いて、どんどんインプラントにしていました。
訴訟社会であるアメリカでは、入れたインプラントが長持ちしないと訴えられる可能性があるのです。
インプラントを持たせるために、骨や歯ぐきにダメージの少ない時に歯を抜いて、インプラントをして、訴訟トラブルを避けようとする意図があったともいわれています。
2)歯医者さんの経営方針?
インプラントを多数行い、インプラントの売り上げが経営基盤の中心である歯医者さんは、ノルマに近いものを掲げて診療しているクリニックもあります。
歯を抜いて、保険でブリッジや入れ歯にするよりも、自費のインプラントの方が、利益率がいいのは事実です。
たとえば、予防のために定期検診とクリーニングを受ける患者さんが多く通うクリニックでは、定期検診の予約が数か月先まで埋まってます。
つまり、数か月先に、必ずお越しになる患者さんがいらっしゃるので、安定した経営基盤があるということです。
美容室さんと同じ感じですね。美容室は行きたい時だけ、行くというより数か月おきに必ずいくものだと思います。
しかしインプラント治療の予定は、自動的に数か月先まで埋まるものではありません。
「インプラントしてください。」という患者さんが、自然に毎月発生するということは有り得ないのです。
それなのに、インプラントを経営のメインにしてしまうと、こちらから積極的にアピールして、インプラントする患者さんを増やさなければいけません。
そのためには…ということなんです。
以上のような理由が、積極的に抜歯してインプラントをすすめる理由かと思います。
「歯がかなりグラグラしている。」
「歯が完全に割れてしまった。」
「過去に何度も治療した歯だけれど、一向に良くならない。」
「被せ物が取れて、根っこしか残っていない。」
など、ご自身の歯の状態の悪さを自覚されていて、歯医者さんの抜歯の診断に十分にご納得されていれば問題はないのですが、少しでも疑問や不安に感じることがありましたら、迷わずにセカンドオピニオンを受けることをお勧めします。
以上「インプラントをすすめる歯医者」でした。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院