院長の笹山です。
今回は自費治療についてのお話です。
当院は保険診療がメインのクリニックですが、治療の流れの中で自費治療について説明する機会はあります。
その時多くの患者さんが聞かれるのが、ブログのタイトルにある
「何年くらい持ちますか?」
というご質問です。
色々な種類の自費治療がありますが、今回はセラミックやジルコニア、自費の入れ歯について、どれくらい持つかについてお答えします。(インプラントは含みません。)
インプラントについては、別の機会に書くつもりです。
自費治療は保険適応治療と比べて費用がかかりますので、
「どれくらい持つか聞いておきたい。」と思うのは当然だと思います。
その際に私がどう答えているかといいますと、
「保険治療に比べて長持ちするとは思いますが、何年とは言えません。」
とお答えしています。
質問の答えになっていないと言われそうですが、そうしか答えようがないのです。
なぜなら、お口の条件は人それぞれ違うからです。
例えばセラミックの歯を1本入れるにしても、人それぞれです。
・そのセラミックの歯が前歯なのか?奥歯なのか?
・神経はあるのか?ないのか?
・歯周病はあるのか?ないのか?
・今、歯が全部で何本残っているのか?
・嚙み合わせは強いのか?弱いのか?
・虫歯や歯周病のなりやすさは高いのか?低いのか?
・歯ぎしりや食いしばりの癖があるのか?ないのか?
・定期的に検診は受けているのか?いないのか?
・歯磨きは上手なのか?あまり上手じゃないのか?
上記のような様々な因子が関わって、治した歯がどれくらい持つのかが決まります。
また「どれくらい持ちますか?」の質問の解釈も、
「持つ。」というのが、何を指すのかにもよって変わります。
たとえば
① 欠けたり、外れたりするまで。
② 治療した歯が虫歯になるまで。
③ 歯そのものが抜けてしまうまで
などです。
そういうことを考えていくと、「何年持ちます。」とは軽々しく言えないのです。
ただ、患者さんが何年持つか聞いておきたいという気持ちはよく分かりますので、
「少なくとも5年は持ちます。」
とお答えしています。
この5年はどこから出てきた数字かといいますと、
自分の治療結果の蓄積によるものです。
私は医院を先代から引き継いで10年が経ちました。
その間、多くの自費治療をおこなってきました。
10年前におこなった自費治療で今でも普通に機能している歯はたくさんありますが、5年前におこなった自費治療は、まだ5年しか経っていません。
この先どれくらい持つかは、まだそれ以上の年数が経過しなければ分からないのです。
私は自分のおこなった自費治療が何年持つかを把握しておきたいと思っていますので、この10年の自費のカルテはすべて保管しています。
医院を引き継いで10年が経ち、最長10年持っているものもあり、9年前、8年前、7年前…と経過観察しているものもたくさんありますので、間をとって「自分がおこなった自費治療なら5年と言っても差し使えないかな。」と認識しています。
決して5年しか持たないのではなく、まだ結果が出ていないので、そこまでしか言えませんということです。
自分がおこなった自費治療を振り返ると、セラミックやジルコニアなどの被せ物や詰め物に関して、5年持たなかったケースは1%以下と認識しています。
これは私が上手いとか下手だとかそういうことを言いたいのでなく、適切に治療すれば、「極端に硬い物を噛んでしまった。」とか、「定期検診にやクリーニングなどのメンテナンスを全く受けなかった。」などを除けば、普通は5年は持つのではないかという一つの意見です。
自費の入れ歯に関しては、少し違います。
入れ歯はジルコニアやセラミックのような硬い素材ではありませんし、そもそも接着剤で固定して取れなくなる被せ物と、取り外しできる入れ歯は構造が全く違います。
入れ歯は自費でも壊れることもありますし、後で周りの歯が抜けてしまって、修理が必要になることは結構あります。
ただ、修理すれば使えますので、5年で使えなくなった入れ歯というのは、ほぼありません。
根拠もなく「〇年ぐらいは持ちますよ。」というのは伝えるのは何か違う気がしますので「何年持ちますか?」というご質問には、私は自分の治療結果をベースに「少なくとも5年は持ちます。」とお答えしています。
また、私は今までに「セラミックは何年持つ。」という具体的な統計や論文を一度も見たことがありません。最初に書いたように歯がどれくらい持つかは、様々な因子が影響するので、何年持つという統計を出すことは不可能なのです。
ですので私は患者さんに
「自費治療は、今ある歯に対してベストな治療を施すことです。」
とお伝えしています。
「絶対〇年は持ちます。」とはっきりと言えませんが、
それなりの費用を頂くことで、保険治療ではかかってしまう様々な制限が解除されます。
制限とは、
材料や時間、歯を作る歯科技工士さんの技術です。
①保険治療では使えない材料や器具を使うことで、より精度の高い歯を作ることが出来ます。
②保険治療では確保できない治療時間を十分に取ることで、今自分が持っている治療技術を最大限発揮することが出来ます。
当院での自費治療は基本全てDr対応で1時間の治療時間を確保しています。
Dr対応とは、治療の説明はもちろん、歯の色を合わせる写真撮影、仮歯の製作、噛み合わせ採り、歯型採り、完成物の調整と装着、装着後のセメント除去などスタッフに任せず、私自身で全ての過程を3~6倍のルーペで歯を見ながら治療しています。
③歯を作る歯科技工士さんに保険で作る歯の何倍もの制作料をお支払いするので、歯科技工士さんも時間をかけて丁寧に歯を作ることが出来ます。
この3つが長持ちする治療において重要な要素です。
ジルコニアやセラミックや自費の入れ歯の素材や材質が良いことは間違いないのですが、それは自費治療のメリットの一部であり、どちらかといえば、上記のように”制限がない状態”で治療や製作が出来ることの方が、自費治療がどれくらい持つかに影響すると私は考えています。
もちろん患者さんの歯磨きなどのセルフケア、食生活、定期的な検診やクリーニングなども長持ちさせるための大切な要素です。
以上「自費治療は何年持ちますか?」でした。
皆様のお口の健康に少しでも参考になれば幸いです。
宝塚市の歯医者 笹山歯科医院